周年記念事業について

創立70周年を迎えるにあたっての
大手前学園の想いをご紹介します。

スペシャル対談

60周年の伝統を誇り、数多くの栄養士、管理栄養士を輩出してきた大手前栄養学院専門学校。その学びを、変化していく時代の要請にこれまで以上により広く応えていくために大手前大学の新学部「健康栄養学部 管理栄養学科」として2016年4月よりスタートします。管理栄養士の未来とこれからの学びについて、社会の第一線で活躍する卒業生と共に語り合いました。

profile

大手前学園 理事長
大手前栄養学院 学院長

福井 要

専攻分野/人間関係論、国際経営学。2007年4月より大手前栄養学院、学院長。2013年9月より大手前学園 理事長に就任。

大手前大学 健康栄養学部 学科主任
(就任予定)

三木 紳一郎

専攻分野/ 食品衛生学。2014年4月より大手前栄養学院 副学院長。2016年4月より大手前大学 健康栄養学部 学科主任に就任予定。

さつきの学園 堺市立さつき野小学校勤務
大手前栄養学院専門学校 2010年卒業

森田 恵子

在学中は栄養教育・臨床栄養を学び、現在、栄養教諭として学校給食の運営管理と食教育を担当。「おいしく食べて一生を健康に過ごせる子どもの育成」をめざす。

社会福祉法人 天寿会 平尾荘勤務
大手前栄養学院専門学校 2014年卒業

富永 佳代

在学中は臨床栄養学を学び、現在、高齢者施設に入所されている利用者さまの栄養管理と献立作成を担当。将来は在宅訪問で活躍する管理栄養士をめざす。

医療法人大鵬会 千本病院勤務
大手前栄養学院専門学校 2015年卒業

久保 彩子

在学中は臨床栄養学、特に「糖尿病の食事療法」について力を入れ取り組む。現在、患者さまに対する栄養管理、給食管理、栄養指導を担当。信頼される管理栄養士をめざす。

「食と健康」が問われる時代にますます大きくなる管理栄養士の社会的役割

福井 もともと、1955年に栄養部を設置し栄養士を養成する専門学校としてスタートした大手前栄養学院。2002年には「より高度な知識・スキルを持つ人材が必要」という社会の要請を受け、全国の専門学校としては2番目となる、4年制の「管理栄養学科」を開設しました。以来、数多くの管理栄養士を輩出してきた本校ですが、少子高齢化という時流のなかで、今また社会的ニーズが大きく変わろうとしていますね。

三木 テレビや新聞では毎日のように「食と健康」が取り上げられているように、健康な暮らしへの意識の高まりと同時に、〝正しい情報〞が求められていると感じます。大手前栄養学院では早くから実践的な管理栄養士の育成を行ってきましたが、社会の要求や期待はさらに大きくなっているのではないでしょうか?

森田 私は現在小学校の栄養教諭を務めていますが、まさに〝正しい情報〞の必要性を感じています。今の時代、テレビをはじめインターネットなどでさまざまな情報が入手できる一方で、情報に振り回されたり判断を誤るケースも少なくありません。児童はもちろん保護者に対し、いかにシンプルかつ的確に伝えていくことが、管理栄養士に求められていると実感しています。

富永 私が勤めている高齢者施設では、利用者の方の多くが複雑な疾患を抱えておられます。病気のこと、食品と薬の組み合わせなど幅広い知識に加え、個人の嗜好を考慮した柔軟な対応力も求められます。どんなに健康的な献立でも、食べていただけないと意味がありませんから。

久保病院でもそうですよ。院内の食事は治療の一貫ですから、どうしても塩分が制限されて美味しさにつなげるのが難しいんです。食事摂取基準に則った栄養数値だけで献立を立てるのではなく、出汁などを使って旨味を引き出すなど、いかに美味しくなるかといった工夫が求められていますね。

三木児童を抱える学校ではアレルギーの問題もあるし、現場では本当にいろんな要素や課題が複雑に絡んできますね。

福井 皆さんのお話を伺っていて改めて思うのは、これからの時代に必要なのは単なる知識やスキルだけではないということ。実践に基づいたより高い専門性はもちろんのこと、幅広い視野や考察力、問題解決能力など、社会で活躍するための資質というか、人間的な基礎力が問われています。大手前大学の新学部「健康栄養学部管理栄養学科」開設は、変化していく時代の要請に、これまで以上により広く応えていくためなのです。

専門学校の学びにプラスして大手前大学ならではの豊かで高度な人材育成を

森田私が大手前栄養学院を選んだのは、社会に則した実践的な学びに魅力を感じたからなんですが、大学の学部になることでどう変わるんでしょうか?

三木 基本的には変わりません。大手前栄養学院は、管理栄養学科1期生卒業の2006年から10年連続で国家試験合格者数第1位という実績を持つほど、カリキュラムやサポート体制を磨いてきました。その学びをしっかりと引き継ぎ、さらに大学ならではの学びをプラスしていくというイメージですね。

福井例えば、大学で実施しているプレゼンテーション大会がそのひとつ。「10の問題解決能力」CーPLATSⓇ を身につける教育の一貫なのですが、自らの研究を大勢の前で発表することで、人に伝える力や聞く力、つまりコミュニケーション能力を高めるというものです。仕事は一人で行うものではなく、周囲の人と協力し合うチームワークが必要となり、そこではコミュニケーション能力が不可欠ですから。

久保 確かにそうですね。病院での栄養指導においては、ドクターや看護師との連携はもちろん、患者さまやそのご家族など相手の立場に立ちいかに分かりやすく伝えていくかが大切なんです。

富永 食に一番詳しいのは管理栄養士ですが、自分のこだわりを通すだけではうまくいかないですね。高齢者施設でも医療機関や介護のケアマネージャー、機能訓練の先生など、多くの方が関わってきますから、全体のバランスを考えないと結局やるべきことができなくなってしまいます。

森田 その点、大手前栄養学院は大学卒業後に入学してくる方や社会人経験者の方も多くて、幅広い年齢層の仲間と学びあえたのがコミュニケーション能力の向上につながったかもしれません。

久保 いろんな世代の仲間と触れあえることで新しい価値観を学んだり、とても新鮮で刺激になりました。

富永 教員の先生方も社会経験を持つプロの方というのも、生きたアドバイスを受けられる点で大きな魅力でしたね。

福井 そうした専門学校ならではの強みや魅力は、大学の学部になっても大切にしたいところです。

三木 実践的な学びをそのまま活かしながら、そこに大学力を併せて相乗効果を発揮したい。「健康栄養学部 管理栄養学科」は優れた管理栄養士を育てる場であると同時に、豊かな人間形成を実現する場でありたいと考えています。

新たな受験資格も加わりさらに広がる進路と可能性に満ちた活躍の舞台

福井 そしてもう1点、大学の学部になることで新たに加えられるのが食品衛生監視員の受験資格(※)ですね。

三木 そうなんです。大学になることで食品衛生監視員養成施設等の登録が可能になり、それによって国の検疫所や地方自治体の保健所、食品メーカーの衛生管理など、新しい進路が広がるでしょう。

福井 もちろん、管理栄養士としての活躍の幅も、どんどん広がっていますね。実際に現場で活躍する皆さんはいかがですか?

森田 教育の場では部活動や受験など、子どもたちの成長に応じてさまざまなシーンがあります。そうしたなかでスポーツ栄養や受験のための栄養など、管理栄養士として挑戦したい分野は広がっていると感じています。

富永 私の場合は、現在高齢者施設の利用者さまに対し栄養管理と献立作成を行っているのですが、そこで感じるのは在宅での栄養管理がまだまだ不十分だということ。少子高齢化が進むなかで、一人暮らしのお年寄りの方が今後増えていくと思いますから、いつかは在宅で活躍する管理栄養士をめざしたいですね。

三木 今、日本では男性の平均寿命が80歳に対し、健康寿命は70歳。女性では平均寿命87歳に対し健康寿命が74歳と言われています。つまり、10〜13 年は治療や通院が必要な状態だということ。今後はこの健康寿命をいかに延ばすかが時代の大きなテーマになると思いますが、そこでも管理栄養士の活躍が求められるでしょうね。

久保 実際に病院でも患者さまの大半は高齢者の方々です。そういう方々に私たち管理栄養士ができることは、治療だけでなく予防医療として地域に働きかけることかもしれません。

三木 病院では医師や看護師、薬剤師、管理栄養士などがチームで治療を行うNST(栄養サポートチーム)が注目されていますし、そのほかにも医薬品開発における治験コーディネーターなど、より高度な専門性が求められる道も広がっています。

福井 活躍の場が広がるということは、それだけ管理栄養士が社会に必要とされているということ。だからこそ、地域社会に貢献しうる力強い人材育成をめざして、「健康栄養学部 管理栄養学科」をより一層発展させていきたいですね。

  • 取得できる資格・免許については予定です。