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わたしたちの「ゆさぶる ささる 胸を打つ」

消極的だった自分が変われた「先生」との出会いと成長の軌跡

現代社会学部 企業経営専攻 4年
市川 佳依さん

「クロスオーバー制度」の利用で現代社会学部の講義を受講し、転部を決意

子どもの頃、美術館巡りが趣味の祖父にさまざまな美術館へ連れて行ってもらったことがきっかけで絵画に興味を持つようになりました。そして、大阪で開催されたゴッホ展やルーヴル展にも足を運ぶうちに「本場のルーヴル美術館にも行ってみたい」という想いが強くなり、外国語を学べる学部を探していたのです。そんなとき、「大手前大学の国際日本学部なら外国語を学べて、フランスに行けるかも!」と思い入学を決めました。

入学後は国際日本学部の授業を楽しんで受けていましたが、学部・専攻の垣根を越えて学べる「クロスオーバー制度」を利用し、現代社会学部(現社)の授業も履修しました。どの授業も興味深く、特にオンデマンド授業の「ニュースを読む」には夢中になりました。普段はインターネットでニュースを読むことが多く、新聞に触れる機会が少なかったのもあり、“読む”ということが新鮮で挑戦しがいのある内容でした。授業の最後の課題は、自分が気になったニュースについてレポートを書くというもので、私は実在の殺人事件を取り上げました。
この授業を通じて、ヤングケアラーなど“身近で起きている社会問題”に関心を持つように。聞いたことはあるけれど実はよく知らない社会課題に次々と触れるなかで、もっと深く知りたい、もっと学んでみたいという想いが大きくなっていきました。

ちょうどその頃、現社への転部を迷っていた私に、同じく現社にいた友人が「クロスオーバーでその授業を取っているなら、もう現社に来てもいいんじゃない?」と背中を押してくれました。その一言で迷いが晴れ、3年生から現代社会学部へ転部することを決意したのです。

先生から導かれた「ゼミ長」への挑戦とボランティア活動で身につけた積極性

ゼミに入る際、担当の先生との面談が大きな転機になりました。ゼミの内容から雑談まで1時間ほど話したのですが、そのなかで先生から「ゼミ長をやってみない?」と声をかけていただいたのです。それまでリーダー経験はまったくなく、他にも適任者はたくさんいました。でも、「一見、リーダーシップがなさそうな人がリーダーシップを発揮するとおもしろい」と、先生の発想で指名してくださったそうです。
緊張しつつも14人のリーダーに就任し、「任されたからには頑張ろう」と心を新たに。まずはゼミ生全員に積極的に話しかけて信頼関係を築くことから始めました。私は人見知りで、自分から話すのが得意ではありませんでしたが、役割を与えられたことで前向きに取り組むことができました。

3年生のゴールデンウィークには、先生の紹介でゼミ生5人ほどと一緒に一般社団法人カワイク介護が主催するイベント「ユニバーサルカワイイ」のボランティアに参加しました。ファッションショーや雑貨販売などの出店が並ぶイベントで、私は主に受付を担当し、多くの来場者の方とお話しすることができました。中高年の方が多いはずだと思っていたのですが、実際は若い世代の来場者が多く、同年代の人たちが介護に関わる活動に興味を持っていることを知って驚き、価値観が大きく変わりました。
この経験を経て、「ゼミの仲間にもボランティアに挑戦してほしい」と思うようになり、先生に他の活動について相談したところ、いくつも案を出していただきました。夏にはYMCAの子ども向けイベントのボランティアに皆で参加。最初は子どもとのコミュニケーションに戸惑いましたが、同級生から声かけのコツを教わるなど、最後には子どもたちと一緒に全力で楽しめるようになりました。このボランティアで、人と積極的に関わる姿勢が身についたと感じています。さらに冬には、YMCAの方から「また参加しませんか?」と声をかけていただき、今度は運営の部分も任せていただけるように。子どもたちが昔ながらの遊びを体験できる時間や具体的な進め方を考えて実行するという役割を担えたことがうれしかったです。
もともと消極的だった私ですが、これらのボランティア経験を通じて、自ら動き、皆と協働するという意識が生まれたと実感しています。

ゼミ合宿の成功、そして楽しめた就職活動で不動産会社内定へ

私の4年間で特に印象的だった活動は、大分で行われた秋のゼミ合宿です。ゼミのメンバーは仲のよいグループが2つに分かれていて、普段あまり話せていない人同士の距離が大きく開いていました。そこで、合宿をきっかけにゼミ全体の連帯感を高めようと考えました。
とは言え、バスの移動中などではどうしても自然とグループに分かれてしまいます。しかし、稲刈りの作業を通してみんなでひとつのことに集中して連帯感が生まれました。そして夜の飲み会も提案すると、多くのメンバーが参加してくれました。合宿の最初に撮った写真と最後に撮った写真を比べると、最初はよそよそしかった雰囲気が、最後にはみんなが楽しそうに交流している様子に…。合宿を通してゼミがまとまって明るい雰囲気になっていました。

そして私自身が、さまざまな経験を経て前向きになったと感じています。自分の意志を言葉にすること、発言に責任を持つことの大切さを学びましたし、その結果、希望した不動産関係の会社への就職が決まったと感じています。最初は銀行に内定をいただいていましたが、自分のやりたいことを見つめ直し、楽しみながら就職活動を進められたことがとてもうれしいです。

現在は、現代社会学に興味を持つきっかけとなった「ニュースを読む」の授業で出てきた“ヤングケアラー”を研究テーマとして卒業論文を進めています。私には姉と3人の弟・妹がおり、昔は母が祖母の介護をしていた関係で、姉と私が弟や妹の世話をしていました。しかし、自分がヤングケアラーだったと気づいたのは、この授業で取り上げられたとき。私や姉のように、自分がヤングケアラーだと自覚しないままの人が他にもたくさんいて、支援が必要な人もいるのではと思いましたし、そんなことを周りにも知ってほしいと思いました。そこで現在は、ヤングケアラーに対する支援や環境について、SNSで問題提起している団体から個人まで、幅広くインタビューを進めています。

転部のきっかけとなった授業、背中を押してくれた友人、大きな転機となった先生との出会い、そしてボランティアやゼミ合宿での成長、就職活動で得た内定…。何気なく大学に入学した私でしたが、優しい先生や友人たちのおかげで自分を変えることができました。社会に出たら、まずは与えられた仕事に真剣に取り組み、人から信頼を得て、自分で自分を認められる人間になりたいと思っています。

※内容はすべて取材時のものです。(2025年11月)