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わたしたちの「ゆさぶる ささる 胸を打つ」

先生との出会いと表現万博で育んだ「空間デザイン」への想い

建築&芸術学部 インテリアデザイン専攻 4年
髙岡 日陽里さん
株式会社スペース 内定

私の価値観を大きく広げてくれた先生との出会いとゼミ活動

高校生の頃、私は家や空間にまつわることを含め、芸術やデザイン全般に広く興味を持っていました。しかし、そのなかで自分が何に向いているのかまではわからず、将来どの道に進むかまでは決めきれていませんでした。そんなとき、大手前大学が「入学後に専攻を決められる」「他学部の授業も履修できる」という柔軟さがあることを知り、ここなら自分の興味を広げながら将来の軸を見つけられるかもしれないと感じて入学を決めました。

1年生の頃は製図や模型づくりがとにかく楽しく、休日も没頭して作業をしていました。よい評価もいただき、クラス代表として発表を任されることもありました。ただ一方で、人前に立つと自分の考えを抑えてしまう癖が…。どことなく自分の想いを隠したい部分がありました。

そんな私を大きく変えてくださったのが、2年生からアドバイザーとして、3年生からはゼミで何から何までご指導いただいた下田先生です。なぜこんなに先生に頼れたかというと、先生は学生一人ひとりの性格や考え方といった深い部分にしっかりと目を向け、気持ちに寄り添ってくださったからです。

私は幼い頃からまわりと感じ方が違う自分を表に出さないようにしてきたタイプでした。でも先生は、そんな私の価値観を「おもしろい」と受け止め、「もっと外に出していこう」と背中を押してくださいました。

また、ゼミのあたたかい雰囲気づくりにも力を注いでくださり、友人たちも私の個性を理解してくれたことで、次第にまわりに合わせた自分を演じなくても自分らしくいられるようになっていきました。このことは私にとってとても大きなことでした。
もし私と似ているなと思う高校生がいたら、この大学の、先生との距離が近くて寄り添ってくださる環境が合うのではないでしょうか。そして、少しでも自分を出してみれば共感してくれる人がいて、そこからの相乗効果で自分自身がのびていくと思います。

現在取り組んでいる卒業制作でも、先生からの「髙岡さんらしさ全開で一位をとろうよ」という力強いアドバイスにより、私が「やってみたい」と思ったテーマに取り組んでいます。それは、“すわる人の行動”を観察し、「本来すわる場所ではない空間に、あえて“すわる行為が生まれる場所”をつくる」という挑戦です。
下田先生との出会いが自分の価値観を広げ、自分自身を認められるようになった大きな転機になったと感じています。

仲間とつくりあげた「表現万博」で見つけた、空間づくりの本質

3年生の夏に挑戦した「表現万博」は、学生生活の中でも特に力を注いだ経験でした。先生のご縁で、淡路島を拠点に“表現と自立”をテーマに活動するユニット「さんそデザイン」のお二人からお声がけいただき、ゼミの有志5人でプロジェクトに参加しました。

この取り組みでは空間の設計部分から学生に任せてくださいました。コンセプトづくりでは、学生一人ひとりが3案ずつ持ち寄り、ディスカッションを重ねながら空間の方向性を決めていきました。その過程で、さんそデザインのお二人が大切にされている「人との対話を尊重すること」「子どもたちが自由に表現できる場をつくりたい」という想いを伺い、それをどう空間に落とし込むかを真剣に考えました。
そこで生まれたのが、“作品を通して作者と対話できる空間” というコンセプトです。Tシャツを“作品”ととらえ、ただ展示するだけでなく、来場者自身も表現に参加できる場にしようと考えました。淡路島の子どもたち41人がアーティストとなり、原画を描いたものをTシャツにして会場で展示・販売する仕組みを構築。売上の一部はデザイン料として子どもたちに還元することで、“表現をかたちにして分かち合い、価値に変える”という循環をめざしました。

制作の段階では、さんそデザインのお二人から多くのスケッチやアイデアをいただきましたが、その発想の豊かさや、楽しみながら考えるという姿勢に大きな刺激を受けました。大学の授業とはまた違うワクワク感に触れ、「社会に出ても、こんなふうに楽しみながら創造できる人でありたい」と感じました。ゼミの仲間とも長時間をともにし、ものづくりを通して絆が深まったのも学生生活ならではの思い出になりました。

それから、展示の運営にも携わらせてもらいました。来場者にタグを手渡し、そのタグに書かれたメッセージを届けたいTシャツにつけてもらう参加型コンテンツを用意しましたが、アーティストである子どもたちが家族と一緒に展示を訪れ、自分のTシャツに「かっこいい!」「着たくなりました」といったメッセージがついているのを見てとっても嬉しそうで…その姿に思わず涙が出てしまいました。「何にも縛られず表現していいんだよ」という想いが子どもたちに届いていると実感した瞬間でした。
また、私が気に入って着ていたTシャツの作者の子どもが私のところに来て、作品の意図を熱心に説明してくれたことも本当に嬉しかったですね。

このプロジェクトを通して強く感じたのは、“届ける相手が確かに存在する”ということ。社会に出て空間をつくるとき、最終的にその空間を体験するのは“人”です。表現万博は、私が初めて空間デザインに触れた経験となりましたが、「何を伝えたいのか」「どんな体験をしてほしいのか」を踏まえて配置や素材、形状を考えていくプロセスこそ空間デザインの核心だと学びました。そして、人の心に寄り添いながら空間をつくることの魅力も強く感じることができました。

この体験から私は、物理的な空間にとどまらず、実際の行為を通して人の心に想いが届く空間をつくりたいと考えるようになり、これが後の就職活動の方向性にもつながっていきました。

また、副専攻として心理学を学んだことも空間デザインの考え方に影響を与えてくれました。特に「アフォーダンス」という概念(椅子が「座る」ことを自然に促すように、環境や物が人の行為を喚起する性質)は、今後の空間づくりにも必ず生きていくと感じています。

“空間ディスプレイ分野で働きたい”という想いが明確に

就職活動では、「商空間を通じて人々に笑顔と希望を届ける」という理念のもと、商業施設や文化施設の企画から設計、施工まで一貫して行っている、空間ディスプレイ分野3位の株式会社スペースから内定をいただきました。

当初はハウスメーカーやリフォーム、プロダクトなどさまざまな業界を検討していましたが、「表現万博」での経験が決め手となり「空間ディスプレイで働きたい」と方向性が固まりました。そのなかでも業務内容が細分化されている業界でもあるため、各社をとことん研究したうえで、最終的には直感的にピンと来た5社に絞って進めることにしました。
ポートフォリオは“自分らしさ”をとことん追求し、上下左右どの方向からも開けられる仕組みで楽しさを演出。わからないことがあれば下田先生やゼミの先輩に相談し、面接練習にも何度も付き合っていただきました。心強い環境があったからこそ頑張れたと思います。

私はこれまで、“高みをめざす”選択を避けがちでした。しかし今回は初めて、業界でもトップクラスとされる会社を志望して挑戦しました。もちろんそれは、自分がやりたいことがそこにあるからという理由によるものでしたが、入社後は、高い水準のなかで多くの刺激を受けながら成長していけるのではとワクワクしています。

先日の内定式では、「真面目な姿勢の中にクリエイティブさが光っている」という素敵なメッセージをいただき、とてもうれしかったです。先生が寄り添いながら教えてくださったこと、ゼミの仲間との日々、表現万博での気づき、就職活動での頑張り…これまでの学びがすべてつながったように感じています。

これから社会に出てどんな空間をつくっていきたいのか。具体的な目標はまだ模索中ですが、自分が考えた空間で人の心が動き、豊かになることが夢としてあります。そして、クライアントの想いを多くの人に届けること、SNSやwebでは得られない“リアルな体験価値”を空間でつくることも叶えていきたいです。

画面上で消費されるのではなく、行ったからこそ体験できる心が動かされる空間を。つまり、“行為体験”を伴った空間を届けるために、これからも楽しみながら努力を重ねていきたいと思います。

※内容はすべて取材時のものです。(2025年11月)