わたしたちの「ゆさぶる ささる 胸を打つ」
学内外での学び、友人たちと挑戦を重ねて掴んだ「栄養教諭」への道

A.N.さん
教員採用試験(大阪市・栄養)合格
大好きだった“学校給食”が私の原点
小学生の頃から学校の給食が大好きで、なかでも鱈のフライはお気に入りでした。中学生になると、忙しい両親に代わって自分で食事を作るように。レシピを決めて祖父と買い物に行き、家族6人分の料理を作って「美味しいね」と言ってもらえることがなによりの喜びでした。食べることが好きだった私は、いつの間にか「作ること」そのものにも楽しさを感じるようになり、自然と“食”の世界に惹かれていったのだと思います。
そして高校生になると、いつか食を通して人を笑顔にする仕事がしたいと思うように。栄養教諭や管理栄養士という職業を知り、管理栄養士の資格を取れば将来の選択肢が広がるのではないかと考えました。出身地の鳥取県には管理栄養士の養成施設がなかったため情報を集めていたところ、母の知り合いや高校の先生から「大手前大学がいいよ」と勧めてもらいました。その理由は、本学では実習や実験、臨地実習を中心とした実践的なカリキュラムが組まれているということ。そして、給食施設や病院だけでなく、保健センターなど公衆栄養に関わる施設でも学べるという魅力も知り、大阪に出る決心をしました。ただ、当時はまだ「栄養教諭」をめざすかどうかまでは決めていませんでした。
チームでの実習を通して学んだ計画性と協働の大切さ
入学と同時に大阪で一人暮らしを始めましたが、最初のうちは慣れないことばかり。授業も忙しいなかで意識してきたのはなによりも健康管理です。3食をしっかり摂り、十分な睡眠を確保し、疲れたときには誰かに相談する。そんな生活リズムを大切にしてきました。食事は夜に多めに作り、翌日の朝食やお弁当に回すように。6人家族の食事を作っていた経験がここで活かされました。また、入学後まもなく友人もでき、家族と離れて暮らすなかで気軽に話を聞いてくれる友人の存在はとても大きかったです。
また、2年生からはオープンキャンパスのスタッフとして活動し、高校生や保護者の方々に大学生活の様子を学生目線でお伝えしたり、進路選択の相談に乗ったりしました。もともとは人前で話すことが苦手でしたが、「クロストーク」で来場者の前で話す機会をいただき、人前で話すことへの抵抗感が減って堂々と話せるようになりました。これは私にとって、自分の成長につながる貴重な経験になったと思います。
好きだった授業は、1年生から始まった「調理学実習」。班ごとに分かれて和食や中華などの本格的な料理を作りました。2年生では「給食経営管理実習」が始まり、調理に入るまでの「計画」の大切さを痛感しました。チームでどんな献立を作るのか、どの順番で作業を進めるのかということから、衛生管理や作業効率まで考える必要がありました。さらに、大量調理では普段使わないような大きい調理器具を扱うため、例えば「どのくらい水分が蒸発するのか」といった点まで考慮する必要があるなど、多くの気づきを得ることができました。
迷いながらもチャレンジして強まった「栄養教諭になりたい」想い
忙しくも充実した日々を送るなかで、栄養教諭をめざすかどうかについてはずっと迷っていました。栄養教諭とは、小・中学校で学校給食の管理や児童生徒への食に関する指導を行う教員のこと。子どもたちの食生活の乱れが社会問題となるなか、2005年に文部科学省によって栄養教諭制度が創設されました。栄養教諭の採用試験に合格するのは難しく、他の教員採用試験と比較しても狭き門と言われています。
2年生のとき、アドバイザーの先生に「自分が栄養教諭に向いているかわからなくて迷っています」と相談したことがあります。すると先生から「4年生でも迷っている学生はたくさんいるから、まずは頑張って続けてみて。出願のときに決めてもいいんじゃない?」と。その言葉に救われ、「迷っていても、今できることを精一杯頑張ろう」と気持ちが前向きになりました。将来に迷いがありながらも一つひとつの授業にていねいに取り組んでいきました。
3年生では教員採用試験の説明会に参加し、栄養教諭の仕事についてより具体的なイメージを掴むことができ、この仕事に就きたいという想いが強くなりました。そして、3年生で挑戦した大阪市の栄養教諭採用試験では一次試験(筆記)に合格。3年生での受験を実施していない自治体もあるなか、4年生での本番に向けた練習のつもりで受験したところ、合格の知らせを受けて自分でも驚きました。授業に真摯に取り組んできたこと、直前の授業内容と同じ範囲が出題されたことが合格に繋がったのだと思います。
学外での挑戦と教育実習を通して固まった栄養教諭への決意
学外での様々な経験も、「栄養教諭になりたい」という想いを強くしてくれました。
大学の紹介で参加した区民センターでの食育イベントでは、食育に関するゲームやクイズを通して、子どもから高齢者まで幅広い世代の方々と交流しました。特に本学が持つ体験型栄養教育システム「食育SATシステム」を使い、栄養バランスの大切さを伝える活動が印象に残っています。食育を通して地域の方々とコミュニケーションを取ることの楽しさを実感しました。
それから、先生に勧められて参加した1型糖尿病患者会のボランティアでは、病気の子どもたちや保護者の皆さんと料理をしたり遊んだりするなかで糖尿病のことを学び、子どもと関わるやりがいを感じることができました。
3年生の春には「ワクワクEXPO with 第19回食育推進全国大会」で開催された「おおさかEXPOヘルシーメニューコンテスト」に参加し、「春菊の健康お好み丼」を提案しました。このメニューは、のちに本学の新入生キックオフイベントで提供され、皆さんが「美味しい」と笑顔を見せてくれた瞬間に食の力を改めて感じました。
さらに、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンで行われた「食のDEMO LIVE」では、同級生が考案したヘルシーメニュー「きつねう丼」の調理実演と試食会に参加。大阪府の方々や学年を超えた仲間と協力して作り上げた経験は一生の宝物になりました。実は、ヘルシーメニューコンテストに参加しようと思ったときは、自分がこんなに大きいイベントで活動するなんて思いもしていなかったんです。これらの経験を通じて、“何でも挑戦してみること”の大切さを体感することができました。
そして、最大の転機となったのが4年生6月の教育実習です。鳥取の母校で小学5年生を担当し、2回の研究授業を経験。準備は大変でしたが、子どもたちの反応が想像以上によく、「家族と食生活について話してみたい」「野菜を食べようと思った」といった感想をもらえたときのうれしさは忘れられません。授業を通し、子どもの理解度や興味によって臨機応変に対応する難しさとやりがいを学び、「栄養教諭として子どもたちの成長を支えたい」という決意が固まりました。
教育実習を終えた翌日には大阪市の栄養教諭採用試験(一次面接)を受験。鳥取県と試験日が重なってしまい、どちらの試験を受けるか決断を迫られましたが、大阪市を選んで無事に合格することができました。大阪市は自校給食を実施しており、子どもたちとより身近に関わりながら実態に即した食育ができる点にも魅力を感じました。背中を押してくれた家族や、これまで支えてくださった先生方、励まし合った友人たちのおかげで、ここまで頑張ることができたと感じています。
今後は、栄養教諭として子どもたちの健康を守り、食べることの楽しさを伝えながら、安心・安全な給食作りに取り組みたいと考えています。大阪は外食文化が盛んで便利な一方、自分で健康を考える力がより求められる地域です。子どもたちが自ら食を選び、健康的に生きる力を育めるような食育を実践していきたいと思っています。まだまだ学ぶべきことは多く、ここが新たなスタート。知識を深め、保護者の方からも信頼される栄養教諭をめざします。
本学に来てよかったなと思うのは、夢を本気で応援してくれる先生方と、支え合える仲間に出会えたこと。これからも出会いを大切にし、栄養教諭として成長していきたいです。
※内容はすべて取材時のものです。(2025年11月)