わたしたちの「ゆさぶる ささる 胸を打つ」
「VR」で未知へ踏み込み、「AI」で進化し続けるエンジニアへ

日本エンタープライズ株式会社 システムエンジニア
佐々木 陸さん
数々の発表や映像制作スタッフの経験などで鍛えられた「伝える力」
大学生活は「人前で伝える」経験の積み重ねでした。1年生の自己紹介から始まり、英語での発表やゼミでの研究報告、そして卒業論文の発表へと、段階的に多く発表の機会が用意されていました。
なかでも印象に残っているのは、発表のたびにフィードバックがあったこと。聞き手である学生一人ひとりから「わかりやすさ」や「聞きやすさ」といった評価、さらには具体的なコメントを受け取り、それをもとに改善していきました。回数を重ねることで自分の伝え方の癖や課題に気づき、「どうすれば相手に伝わるか」を考える習慣が自然と身についていったと感じています。
こうした経験は、単に発表に慣れるということにとどまらず、情報を整理し、相手の理解度を想像しながら言葉を選ぶというプロセスそのものが現在の仕事につながっていると感じています。また、就職活動においては限られた時間で要点をまとめて伝える場面も多く、入社後の研修でも成果物を説明する際にこの力を活かすことができました。
そして、学内の掲示板で募集していたITサポートスタッフや、映像制作の学生スタッフに挑戦したことも大きな力になりました。特に映像制作スタッフでは、学園祭やオープンキャンパス、プレゼン大会などでの撮影や編集、ライブ配信時のカメラ切り替えを行うスイッチャーなど実務に近い役割を経験。撮影するだけでなく、どうすれば伝わる映像になるのかを考えながら編集を行うなど、アウトプットの質を意識する機会となりました。
さらに、大手前大学の特長であるクロスオーバーの学びを活かし、所属していた情報・コンピュータ専攻にとらわれず、幅広い分野の授業を履修。心理学やメディア、地域文化、音楽など、異なる領域に触れることで物事を多角的に捉える視点が養われたと感じています。特に「サウンドデザイン」の授業で学んだ作曲の基礎は現在でも見返すほど印象に残っており、趣味としての音楽制作にもつながっています。
「VR」との出会い、そして学園祭での「VRプロジェクト」への挑戦
「VR」に興味を持ったのはちょうど3年生の頃。先輩の卒業論文がきっかけで、「もっとVRについて知りたい」と思いましたが、当時は今ほど日本語の情報がなく、海外の解説記事や技術資料を翻訳しながら理解を深めました。手探りでありながらも未知の技術に触れている実感があり、学べば学ぶほどおもしろさを感じていきました。
その延長で取り組んだのが学園祭での「VRプロジェクト」。仲間とチームを組み、大学の校舎をVR空間で再現することに挑戦しました。夏休み中に大学に通い、360度カメラやスマートフォンを使って撮影し、それらをもとに3D空間を構築していったのです。
しかし、制作は順調には進みませんでした。精密に作り込むほどデータ量が増え、VR上でスムーズに動かなくなるという問題に直面。理想と現実のギャップに向き合いながら、どこまで再現するか、どこを簡略化するかを検討しました。
最終的には、データの軽量化を図りながら本格的なVR空間を構築すると同時に、別の手法での再現も並行して進めることで2種類の展示を完成させることができました。この経験を通して、技術的なスキルだけでなく、目的に対して最適な方法を選ぶという考え方を学ぶことができました。理想だけではない、制約のあるなかで最善の方法を導くことの重要性を実感した瞬間でもありました。
関心事だった「VR」×「音楽」を卒業研究に
卒業研究は、関心を持った「VR」と「音楽」を掛け合わせ、「VR空間における音楽鑑賞」というテーマで行うことに。視覚情報が加わることで、音楽の印象がどのように変化するのかを明らかにすることを目的としました。
研究では、まず被験者に目を閉じた状態で音楽のみを聴いてもらい、その印象を記録。その後、VR空間内で同じ楽曲を体験してもらい、視覚情報が加わった際の印象の変化を比較しました。また、楽曲そのものだけでなく、作曲者への興味や意識の変化についても調査しました。
その結果、視覚情報によって音楽のイメージが具体化され、満足度が高まる一方で、「自分の想像していたイメージと異なる」と感じる人もいることがわかりました。なかには視覚情報が加わることで自由な解釈の余地が狭まり、かえって音楽の楽しみ方が制限されると捉えられるケースもありました。
この研究を通して得られたのは、“見せること”が必ずしも価値を高めるとは限らないという気づきです。技術によって表現の幅は広がりますが、それが受け手にとって最適であるとは限りません。人それぞれの感じ方や解釈の余白をどう扱うかという視点は、その後のものづくりや考え方にも影響を与えています。
開発の現場で求められる力と、新たな「情報学部」への期待
そして現在、IT企業で開発業務に携わり、さまざまなウェブサービスの改修や新規開発に取り組んでいます。入社後は約3カ月の研修を経て、実際のプロジェクトに配属。これまでに、通信会社が提供するサービスの更新や、企業から受託したウェブサイトの開発など複数の案件に携わってきました。
なかでも印象に残っているのはサーバーレス環境でのウェブ開発です。当社で前例の少ない取り組みであったため、試行錯誤を重ねながら形にしていきました。学生時代、VRなど新たな技術への挑戦をしてきたことが、今の仕事にもつながっていると感じています。
開発するうえで大切にしているのは納期を守ること、そして、わかりやすいドキュメントを残すこと。また、コードは一度書いて終わりではなく、他のメンバーや将来の自分が理解し、改修していくものです。そのため、誰が見てもわかりやすい構造や記述を意識し、開発を継続しやすい状態を整えることを心がけています。
現場で感じているのは、“IT人材に求められる力の変化”です。「AI」の進化により、プログラムを書くこと自体のハードルは下がっています。もちろん、大学で修得したPythonや研修で学んだPHPなどはエンジニアにとって必要な技術ですが、その一方で、AIが生成したコードを読み解く力や、システム全体を俯瞰して設計する力の重要性がますます高まっています。
また、顧客の要望を引き出し、それを具体的な仕様に落とし込む力も欠かせません。技術だけでなく、人と向き合い、意図を理解する力が求められていると感じています。
こうした力の土台になっているのは、大学時代に培った「伝える力」や、「チームで取り組む」という経験です。発表や、仲間との共同作業を通じて身につけた力が、現在の仕事においても確実に活きていると実感しています。
2027年、設置される予定の「情報学部」(※)では、AIや情報技術に加え、人の感性や体験を含めた学びが展開されると聞いています。今後の情報分野では、技術だけでなく、考え方やプロセスを重視した学びがより重要になってくるでしょうし、私が所属していた情報・コンピュータ専攻がよりパワーアップすると思うと、正直うらやましい(笑)。テーマ設定から設計、実装までを一貫して行う経験や、VR・AIなどの最新技術や機材に触れられる環境が整うことで、より実践的な学びが可能になり、一人ひとりの仕事や今後の人生にもつながっていくのではないでしょうか。
私はまだIT業界で働いて間もないですが、大手前大学では技術を扱うだけでなく、「人がどう感じるか」まで考えられる人材を育てる場になることを期待しています。私自身、大手前での学びと現在の仕事は確実に結びついており、その経験は未来へと広がっていくと感じています。
これからも新しい技術に向き合いながら、人々や社会に価値を届けるものづくりを続けていきます。
※2027年4 月、開設予定(仮称・設置認可申請中。記載の内容は変更される場合があります)
※内容はすべて取材時のものです。(2026年6月)