わたしたちの「ゆさぶる ささる 胸を打つ」
「まずはやってみる」。幅広い学びが拓いた、技術と人をつなぐキャリア

ソフトバンク株式会社
ソリューションエンジニア
那須 晃介さん
「情報技術」と「心理学」。興味のある複数分野を学べる環境に惹かれて
大学に入った2000年代初頭は、家庭にブロードバンドが普及し始め、携帯電話にもカメラがつくようになった頃。ダイヤルアップ接続からADSLになり、家のインターネットが急に速くなった。新しく登場するデジタルの世界が純粋におもしろく、「パソコンを学んでみたい」という気持ちがありました。
一方で、私はもともと理系だったわけではありません。高校時代には芸術系の大学への進学を考えてデッサンを勉強していたこともありますし、心理学にも興味を持っていました。
そんな自分にとって魅力的だったのが大手前大学の社会文化学部 社会情報学科(当時)です。情報技術の基礎に加え、心理学や社会学も学べる。興味のある複数の分野を横断して学べる環境に惹かれて入学しました。
実際、大学ではかなり幅広い授業を受けました。心理学の精神保健に関する授業や、さまざまな文化を比較する社会学の授業。フィールドワークで神社や森について調べ、地域の方に話を伺ってレポートにまとめる授業もありました。ひとつの分野にとどまらず、いろいろなことを学べたのが本当におもしろかったです。
今の仕事に直接つながっているかと言われると、すべてがそうではありません。でも、卒業してから20年以上経った今でも覚えている授業がたくさんある。それだけ、いろいろなことに触れられた学生生活だったのだと思います。
また、情報分野では、WordやExcel、PowerPointなどの基本的なスキルも学びました。当時は卒業論文を書くだけでなく、それをPowerPointでまとめて発表する機会もあり、人前で話す経験を重ねたことは就職活動や社会人になってからも役立っています。
美術部と学園祭実行委員。「人」と関わる経験が今につながっている
大学では美術部に所属していました。中学時代に描いていた油絵を描き直したり、針金を使ってロボットをつくったり。学園祭ではペットボトルを使った大きなアート作品をみんなでつくって入り口に展示したこともあります。
また、1年生の頃から学園祭実行委員にも参加し、模擬店担当としてテントの割り当てや保健所への手続きなど、さまざまな仕事を経験しました。3年生の頃には美術部の部長と学園祭実行委員を掛け持ちすることになり、両方の活動が重なった時期はかなり大変でしたが、今となればよい思い出です。
大学では新しい仲間や先生と出会い、これまで知らなかったことにもたくさん触れました。そうした経験の積み重ねが自分の世界を広げてくれたのだと思います。
「技術」の先にいるのは「人」や「社会」。その原点になった大手前の学び
大学時代の学びのなかで印象に残っているのは卒業論文です。テーマは「遠隔授業システムの導入と運用の評価」。当時は今のように動画がスムーズに動く環境ではありませんでしたが、新しいシステムをどのように導入し、実際の運用をどう評価していくのかを研究しました。
これは、もともとeラーニングに興味があり、先生から研究に誘っていただいたことがきっかけです。システムが現場にどう受け入れられ、どう運用されていくのかを心理学や社会学の視点から考えていきました。
技術だけを見るのではなく、その先にいる「人」や「社会」にも目を向ける。新しい技術の導入は、人の行動や仕組みにも大きな影響を与えます。「技術の先には、それを日常的に使う人がいる」という意識は、今でも自分の中に残っていますし、システムを設計・構築するときに使う人の目線を意識することは、大学時代の環境で養われたと思っています。
現在の仕事でも、システムやクラウドの機能だけを見るのではなく、「それを導入することで現場の業務がどう変わるのか」を考えるようにしています。例えば、クラウドの仕様によってどうしても難しいことがあれば、できること・できないことを正直にお伝えしたうえで、運用上の工夫でカバーできないかを一緒に考える。単にシステムを提供するのではなく、そのお客さまの現場で何が最適なのかを考えることを大切にしています。
振り返ってみると、学生時代に情報技術と社会の関わりについて学んだ経験が今の仕事にもつながっています。
「このままではいけない」という危機感が拓いた次のキャリア
卒業後はインフラエンジニアとしてキャリアをスタートしました。
就職活動では、卒業論文のテーマだったeラーニングに関わる仕事をしたいと思い、教育系の会社などを受けていました。ただ、当時は就職氷河期。関西ではなかなか見つからず、最終的には東京の企業にも目を向け、システムインテグレーターに入社しました。
ところが入社してみると、希望していたeラーニングのソリューションがちょうど終了。「これをやるために入ったのに何をやるんだろう?」と2、3年ほど路頭に迷った感覚もありました。それでも、法人企業のサーバー設計・構築などに携わり、インフラエンジニアとして経験を積んでいきました。
そんななかで転機になったのがクラウドの普及です。それまで、自分たちがサーバーの容量やメモリなどを考え、インフラを一から構築していたものが、クラウドサービスによって大きく変わっていく。「このままだと自分たちの仕事はいらなくなるんじゃないか」と危機感を覚えました。そこで、クラウド事業を手がけている会社を探し、見つけたのがソフトバンクでした。
当時の私は、「新しいものが出てきたら、それにどう対応するか」を考えていたのだと思います。今も、IT業界ではAIをはじめとする新しい技術が次々と登場しています。新しい技術が出てきたら、まずは使ってみる。そこから自分の仕事にどう活かせるのかを探っていく。そういう姿勢が大切だと思っています。
理系出身のエンジニアに囲まれて気づいた自分だけの強み
2011年にソフトバンクに転職しましたが、周囲には、大学の理系学部や大学院で専門的な研究をしてきたエンジニアがたくさんいました。「光の研究をしていた」「交通情報の流れを研究していた」というような人たちと一緒に仕事をするなかで、「自分のオリジナルって何だろう」と考えることもありました。
そこで気づいたのが、“自分には自分なりの強みがある”ということ。私は、技術者として専門性を追求するだけではなく、営業担当やお客さまと会話し、技術的な内容を分かりやすく伝え、間に立って調整することができる。エンジニアの世界では専門的な言葉を使えば伝わるわけではありません。お客さまにとってわかりにくいことを噛み砕いて説明することも大切なのです。
現在は課長として15人ほどのメンバーをまとめています。営業に同行してお客さまに技術的な説明をしたり、営業側と技術側をつないだり、プロジェクトを進めたりすることが主な仕事です。
こうした仕事をするなかで、心理学や社会学を学んだこと、美術部や学園祭実行委員で人と関わったこと、発表を繰り返したことなど、大学時代のさまざまな経験が現在の仕事にも活きていると感じています。
また、自分がメンバーだった頃は自分自身がプロジェクトを完遂することを考えていました。でも今は、「自分がいなくても仕事ができる人を育てる」ことを意識しています。一人で成果を出すのではなく、チーム全体で成果を出せるように人を育てることも大切な仕事です。
そして、これまでの取り組みが評価され、「Google Cloud Partner Top Engineer」を4年連続で受賞することができました。新しい技術を学び、実際に使ってみる。そして、お客さまにとってどんな価値につながるのかを考える。そうした積み重ねが今の自分の仕事につながっています。
まずはやってみる。学び続け、技術の先にある価値を考える
AIの台頭によって、IT業界の仕事も大きく変わっていくでしょう。ただ、すべての仕事がAIに置き換わるとは考えていません。最終的な判断をするのは「人」。だからこそ、これから求められるのは、新しいAIや技術が出てきたときにまず使ってみる姿勢です。
大学時代、先生からは「まずはやってみる」と言われ続けました。その言葉は今でも自分の中に残っています。
新しいものに出会ったとき、最初から正解を求めなくてもいい。まずやってみる。そこから考える。私自身も、そうやって少しずつ自分の可能性を広げてきました。
大学で何を学ぶかだけでなく、そこで何に興味を持ち、誰と出会い、どんな経験をするのか。その一つひとつが、いつか思いがけない形で未来につながるのだと思います。
2027年4月には、大手前大学に「人間情報学部」が誕生すると聞いています。私が学生だった頃にも、情報技術だけではなく心理学や社会学を一緒に学べる環境がありました。これからはさらに、人と情報、技術や感性を横断した学びができると伺っています。そのカリキュラムを見ていると、「自分が学生だったらこっちに行きたかったな」と思うくらいです(笑)。
新しい技術を学ぶことはもちろん大切です。でも、それを使えるだけで終わるのではなく、その技術やアウトプットをどう活かし、どんな価値につなげたのかまで考えてほしい。
単にツールを使いこなすのではなく、「それによって何が変わったのか」「誰の役に立ったのか」まで考えられる力が、これからはより重要になっていくのではないでしょうか。
私自身も「STUDY FOR LIFE(生涯にわたる、人生のための学び)」の精神の通り、新しいものを学び続け、時代に合わせてアップデートしていきたい。そして、自分が学生時代に新しいシステムの導入や運用評価を研究していたように、今度は社内の人材育成や次世代のサポートを通じて、IT業界の人材不足という課題にも少しでも貢献できればと思っています。
※内容はすべて取材時のものです。(2026年10月)