大手前大学

学長挨拶

新型コロナウイルス感染症に私たちの日常が振り回されて2年経ちました。人流抑制と社会経済活動の狭間で試行錯誤が続いていますが、これが正解という対策はなかなか見つかりません。つまりパンデミックに限らず、自然災害や地球温暖化、貧困と格差といった現代の社会課題の多くは、既存の知識やノウハウを当てはめる「技術的問題解決」では対応できないのです。いま私たちに求められているのは、専門知識を持つ人々の知見すなわち学問の力を借りながら衆知を集めて新たな発想で解決策を創造する「適応的挑戦」だと言えます。

専門知識は新しい発見、発明、イノベーションを伴いながら時代とともにアップデートされていきます。それに反応する社会の価値観も変化します。私たちはそうした新しい知識を学び時代や環境に適応的に変化し続けなければなりません。つまり適応的挑戦に応じるには、学校教育を終え、ひとたび社会に巣立った後も、時代や環境の変化に応じて古い考えや価値観を捨て(学び解し)、新しい知識やスキルを獲得し続けること(学び直し)が求められるのです。それは生涯にわたる営みです。

人生100年時代にあって、逞しくしなやかに自分の人生を生き抜くには、不断に学び解し、果敢に学び直し、人生の節々で直面する難題を克服していく素養が必要だと言えるでしょう。大手前大学は開学以来、いわば「学び方を学ぶ」ことを通して、学生の自己学習力・成長力を高めることに注力してきました。それは建学の精神“STUDY FOR LIFE (生涯にわたる、人生のための学び)”に結実しています。大手前大学の使命は、旺盛な自己開発精神と柔軟で創造的な問題解決能力を備えた人材を手塩にかけて育てることにあります。

「一個の人間」と同じく、法人としての大手前大学も適応的な挑戦を繰り返し革新し続けてきました。大阪大手前キャンパスでは、2016年に食の可能性を広げ人々を健康にする管理栄養士の養成を目的に健康栄養学部を、2019年に国際化する社会の中で活躍できる看護師の養成を目的に国際看護学部を開設しました。さらに2023年4月には看護実践科学分野・公衆衛生看護実践科学分野・助産実践科学分野の3つの分野をもつ大学院国際看護学研究科を開設予定です※1。さくら夙川キャンパスでは、2022年に歴史・文化・言語を国際的な視点で学ぶコンセプトを明確にすべく総合文化学部を国際日本学部に改称し、さらに2023年4月には理論・実践・内省が一体となった産学連携PBL(Project Based Learning)を特徴とする経営学部の開設を予定しています※2

適応的挑戦に応じるのは自分の人生を生きる自由を得るためです。自由とは主体的に選択できる幅を広げていくことです。そのうえで選択肢を実現できる能力(ケイパビリティ)を開発していく必要があります。こうした能力の基礎を育むのが人間の普遍的知を幅広く学ぶリベラルアーツです。言い換えれば、リベラルアーツは人間を自由にする学芸です。

大手前大学はリベラルアーツ系の伝統を持ち、その観点から長年にわたってカリキュラムを工夫してきました。そこで編み出されたのが、さくら夙川キャンパスの3学部すなわち国際日本学部、建築&芸術学部、現代社会学部それぞれの提供科目をクロスオーバーしながら、学生自身が主体的に組み合わせて学修する「レイトスペシャライゼーション」(Late Specialization:遅い専門化)です。つまり1 年生の春学期と秋学期で、さまざまな科目の履修が可能で、2年生がスタートするまでに自分の進路を考えたうえで専攻を決められます。同時に、大阪大手前キャンパスの2学部も国家資格に直結する専門職業教育を施しながら、それぞれがリベラルアーツの素地を取り入れています。国際看護学部では多様性を尊重しつつ地域から世界への橋渡しする国際的視野を涵養しています。健康栄養学部ではミライステッププログラムを通じてキャリア開発の主体性を育んでいます。

自分の人生を生きる自由は一人では実現できません。「人との良質なつながり」が未来のキャリアを拓きます。大手前大学は伝統的に学生と教員・職員の距離が近く、スタッフ全員が学生の成長を自身の喜びとし、手塩にかける指導を通して学生と良質な関係を構築しています。キャンパスライフを共にする同級生や先輩との出会いもあります。つながりは相手にとって意味のある関係にできてこそ深まっていきます。授業や課外活動の機会に自分自身のことを語ったり、相手から助言を求めたり、ささやかな手助けをしたりといった「小さな行動」を通して仲間をつくっていってください。

さくら夙川キャンパスと大阪大手前キャンパスは、それぞれ四季折々の美しい自然の姿をみせる夙川公園と大阪城公園に隣接しています。キャンパスで皆さんと会えることを楽しみにしております。

  1. 2023年4月開設予定(設置認可申請中)
  2. 2023年4月開設予定(設置届出予定)

プロフィール

学長
平野光俊(HIRANO Mitsutoshi)
博士(経営学)

1957年12月24日 東京生まれ。
早稲田大学商学部卒業。
神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了。
神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。
神戸大学教授、大阪商業大学教授を経て大手前大学副学長。
2022年4月より現職。神戸大学名誉教授。
経営行動科学学会会長、日本労務学会副会長、組織学会評議員などを歴任。

経営学のなかでも人的資源管理論、組織行動論を専攻し、実務家の「理屈だけでやれるもんじゃない」というその理屈を、学術のフォーマルな知見を用いて解明する研究を行っている。企業との共同研究の実績多数。労働政策審議会(労働条件政策分科会)委員などの活動を通して労働政策の立案にも関わってきた。

主要著作は『日本型人事管理―進化型の発生プロセスと機能性―』(中央経済社)。本書で労働関係図書優秀賞,日本労務学会学術賞,経営行動科学学会優秀研究賞を受賞。最近の著作として『人事管理―人と企業、ともに活きるために―』(共著)(有斐閣)、『経営学の開拓者たち―神戸大学経営学部の軌跡と挑戦―』(分担執筆)(中央経済社)などがある。

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