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史学研究所

地域の歴史・文化財研究の拠点となる史学研究所では、自治体や専門機関と連携して調査・研究を推進しています。 その成果は広く公開されており、地域に開かれた研究機関であることも特徴です。また先進技術として文化財のレーザー3次元計測を活用した記録・レプリカ製作を進めています。WEB上でも3次元計測した文化財を公開しています。

史学研究所は、大阪キャンパスの大坂城三の丸遺跡の調査を契機として1980年に創設されました。2002年に夙川の地に現在の建物が建設され、兵庫県を中心とした地域の歴史・文化財に関する研究を行って参りました。その研究成果は地域社会に広く公開され、学生の実習にも活用しています。研究所を拠点とし、オープンな体制で地域文化財の研究に取り組んでいます。

これまでの調査研究

その一環として実施されているのが各地の文化財調査や、一般市民や学生を対象とした公開講座といった事業です。兵庫県内のこれまでの主な調査研究対象として、播磨の弥生土器、たつの市龍子三ツ塚古墳、加古川市西条古墳群、神戸市南所3号墳、香美町文堂古墳、丹波市達身寺仏像群、姫路市円教寺、伊丹市有岡城、神戸市兵庫津遺跡、たつの市室津海揚がり資料、近世丹波焼、神戸製鋼第三高炉、阪神間の臨海工業施設などがあげられます。また、たつの市城山城、朝来市竹田城、高砂市竜山石材産地などの大規模な航空レーザー計測も実施しています。兵庫県以外の地域でも各地の自治体と連携して、様々な文化財の調査研究を進めてきました。

これからも、3次元レーザー計測装置や3Dプリンターといった最先端の文化財情報機器システムも駆使しながら、歴史・考古・美術史・建築史・文化財科学といった学問分野の枠を越えた調査・研究を展開し、地域社会に開かれた研究拠点をめざします。

地域の専門機関と積極的に連携し、文化財研究を推進中!

史学研究所の特色

レーザー3次元計測を用いた文化財の調査研究

各種の文化財の3次元画像をブラウザ上で動かして、あらゆる角度から見ることができます!

地方自治体との連携協力 

兵庫県地域の歴史・文化財研究から、地域密着の新しい学びを創造します。

主な調査研究成果

兵庫県の歴史・考古学研究において数多くの実績を持つ大手前大学では、兵庫県、神戸市、たつの市、猪名川町の各教育委員会と協定を結んできました。総合文化学部では、このネットワークを最大限に活かし、研究所の施設・設備も利用した授業を行っています。実習授業では、学生が研究所資料に直接触れることができます。

レーザー3次元計測の成果発信

最新鋭の機器でレーザー3次元計測した各種の文化財に関して、許可を得てWEB上で発信しています。パソコン・スマホ上で、文化財をさまざまな角度から細部に至るまで自由にみることができます。

書写山円教寺の調査

兵庫県南西部に位置する播磨国には、「播磨六箇寺」と呼ばれる古代・中世に遡る古刹がありました。六箇寺は地域社会との関係のなかで重要な役割を担ってきたことは知られていましたが、その歴史の具体像を明らかにすることは課題となっていました。

史学研究所では、平成19年度(2007)に「中世「山寺」と地域社会」プロジェクトを立ち上げ、姫路市北西部にある書写山円教寺の調査に取り組んでいます。康保3年(966)創建の由緒を持つ円教寺は、播磨六箇寺の筆頭寺院で、今に多くの歴史文化遺産を伝えます。これまで、3次元航空レーザーを活用した寺院空間の復元、出土遺物・石造物・棟札類・所蔵文書・経典の悉皆調査で多くの成果をあげています。

現在は、円教寺が所蔵する文献資料の調査を進め、学生さんにも手伝ってもらい、古文書1点1点の撮影作業や新出文書を含めた目録作成を行っています。文献史学・考古学・地理学・文化財学などの研究者が揃う史学研究所の特性を活かして、今後も円教寺の歴史の多面的な解明をめざします。

〇『播磨六箇寺の研究』I・II・Ⅲ(大手前大学史学研究所研究報告11・14・21、2013・2015・2021年)

室津海揚がり資料の研究

たつの市大浦海岸から採集された大量の陶磁器類を整理し、分類検討をおこないました。肥前陶磁器をはじめとする16産地の製品が確認されました。古くから港として知られる室津が流通に果たした役割の一端を検討しています。

〇『室津・大浦海岸海揚がり調査報告書』(大手前大学史学研究所研究報告20、2021年)

関西窯業の近代の研究

明治期に行われた内国勧業博覧会資料の記事を材料として、近代化とともに関西の窯業生産がどのように変化、展開したのか、研究を進めています。内国勧業博覧会資料の中から関西(大阪、奈良、和歌山、滋賀、京都、三重)の窯業に関する記述を抽出し、地域ごとに窯場の展開や製品の特徴・変遷を明らかにします。 

〇『関西窯業の近代』Ⅰ・II(大手前大学史学研究所研究報告17・19 2017・2019年)

阪神地域の産業遺産の調査研究

阪神地域の海岸部を中心とした近代産業遺産の調査研究を進めています。近年は特に大阪湾岸臨海工業地帯の産業・港湾遺産について、海から見るという視点による景観調査を実施してきました。写真・ビデオ撮影のほか、レーザー3次元計測も活用した資料化を行っています。

〇『海から眺める大阪湾岸臨海工業地帯』(2018年)

〇『神戸製鋼所神戸製鉄所第3高炉調査報告書』(2019年)

丹波市達身寺の仏像群調査

達身寺は丹波市氷上町にある曹洞宗の寺院であり、達身寺様式と呼ばれる独特の像様をもつ仏像群を所蔵することで知られてきました。重要文化財に指定されたものもあります。主要な仏像59体について写真撮影・3次元計測を行って詳しく調査しました。また日本美術院による彫刻修理に関する記録を翻刻し、関連文献資料をまとめました。

〇『達身寺仏像群調査報告書』1・2(大手前大学史学研究所研究報告15・18、2015・2019年)

香美町文堂古墳の調査研究

文堂古墳は但馬を代表とする横穴式石室墳(7世紀)です。昭和23年と45年に地元の方々により発掘され、大刀や金銅製品などの豪華な副葬品が出土して注目されました。史学研究所は香美町教育委員会と共同で出土品の整理と調査研究を行い、詳細な研究報告書を刊行しました。

円墳と推定され、大きな石を用いた横穴式石室の中から、金銅装の大刀3本や馬具、多数の須恵器などが出土しています。古墳と出土品はそれぞれ兵庫県指定の史跡名勝天然記念物と有形文化財に指定されました。日本海に通じる交通の要衝地に位置しており、王権と深く関わりをもった人物の墓と推定されます。

〇『兵庫県香美町村岡 文堂古墳』(大手前大学史学研究所研究報告第13号、2014年)

たつの市龍子三ツ塚古墳群の調査研究

龍子三ツ塚古墳群は兵庫県たつの市揖西町と揖保川町にまたがって所在しています。この古墳群は比較的古くから知られており、過去に三角縁神獣鏡2面などが出土した1号墳(前方後円墳)が有名です。

史学研究所では、龍子三ツ塚古墳調査団を組織して2006~2008年度に調査を行い、1・2号墳の正確な墳形・規模、残された埋葬施設の構造を詳しく調査しました。1号墳には山陰系の円筒形器台が並べられていたことが判明し、畿内や山陰とつながりを持った地域支配者の姿が浮かび上がりました。

〇 『龍子三ツ塚古墳群の研究-播磨揖保川流域における前期古墳群の調査-』(大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告9、2010年)

神戸市北区南所3号墳の調査

南所(みなみんじょ)3号墳は、兵庫県神戸市北区道場町にある古墳時代後期の古墳です。2000~2002年度の3年にわたり、史学研究所が発掘調査を行いました。

径18m、高さ2.5m以上の円墳で、横穴式石室と石棺の2つの埋葬施設があります。横穴式石室は比較的小さな方形の石材を多段積みした精美な造りのものです。奥壁からみて左に袖部をもつ左片袖式の石室であることも特徴です。

石室内からは武器、馬具、装身具、土器などの副葬品が出土しました。時期は6世紀中ごろに位置づけられ、この地域の横穴式石室の中でも最も古い例に数えられます。

〇『神戸市北区道場町 南所3号墳』(大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第8号、2009年)

発行物リスト

大手前大学史学研究所研究報告第23号『加古川市西条古墳群 行者塚古墳 墳丘・造り出し篇』/2024年

大手前大学史学研究所研究報告第22号『関西電力 堺港火力発電所 旧汽力発電施設調査報告書』/2023年

大手前大学史学研究所研究報告第21号『播磨六箇寺の研究Ⅲ―書写山円教寺の歴史文化遺産(三)―』/2021年

大手前大学史学研究所研究報告第20号『室津・大浦海岸海揚がり調査報告書』/2021年

大手前大学史学研究所研究報告第19号『関西窯業の近代』II/2019年

大手前大学史学研究所研究報告第18号『達身寺仏像群調査報告書2』-日本美術院彫刻等修理記録翻刻編-/2019年

大手前大学史学研究所研究報告第17号『関西窯業の近代』Ⅰ/2017年

大手前大学史学研究所研究報告第16号『京都府宇治市 炭山窯』-近代京焼登窯の構造-/2015年

大手前大学史学研究所研究報告第15号『達身寺仏像群調査報告書』/2015年

大手前大学史学研究所研究報告第14号『播磨六箇寺の研究II』-書写山円教寺の歴史文化遺産(二)-/2015年

大手前大学史学研究所研究報告第13号『兵庫県香美町村岡 文堂古墳』/2014年

大手前大学史学研究所研究報告第12号『兵庫県関係古代木簡集成』/2013年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第11号『播磨六箇寺の研究Ⅰ』-書写山円教寺の歴史文化遺産(一)-/2013年

大手前大学史学研究所研究報告第10号『アジア・太平洋インド洋沿岸地域の環境史・社会史と歴史的景観』/2012年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第9号『龍子三ツ塚古墳群の研究』/2010年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第8号『神戸市北区道場町 南所3号墳』/2009年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第7号『兵庫津の総合的研究』-兵庫津研究の最新成果-/2008年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第6号『兵庫県の美術・工芸の近代』/2007年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第5号『弥生土器集成と編年』-播磨編-/2007年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第4号『馬立遺跡発掘調査報告書』-赤松氏守護屋形馬立説の検証-/2007年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第3号『近世丹波焼の研究』/2007年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第2号『土器研究の新視点』-縄文から弥生時代を中心とした土器生産・焼成と食・調理-/2007年

大手前大学史学研究所オープン・リサーチ・センター研究報告第1号『兵庫津遺跡』-御崎本町地点発掘調査報告書-/2006年